
持続可能なまちづくりが全国の自治体に共通する課題となるなか、注目されているのが、地域由来の廃材を再資源化し、公共事業に積極的に取り入れる「循環型公共調達」の動きです。
その一例として、近年関心が高まっているのが「瓦チップ」の活用です。瓦チップとは、解体工事などで排出された瓦を破砕・選別して製造されるリサイクル資材であり、透水性・保水性・断熱性などに優れ、舗装・園路・法面保護・マルチングなど多用途に対応可能です。
とくに公共事業においては、以下の点で導入効果が見込まれます:
■ 環境政策との整合性
瓦チップは天然素材で構成され、有害物質を含まず、ヒートアイランド対策や雨水浸透の促進に寄与します。環境配慮型設計やSDGsの観点から、国土交通省の「グリーンインフラ整備」や、環境省の「地域循環共生圏」の方針とも親和性が高く、先進的な環境配慮自治体の取り組みとして評価を受けやすい特徴があります。
■ 地域資源の有効活用と経済循環
多くの地域では、古民家・旧家屋の解体により発生する瓦が、産業廃棄物として処分されているのが現状です。しかし、地元の解体業者・中間処理業者と連携し、瓦チップとして公共整備に活用することで、「地元資源の地元活用」という経済循環を創出できます。
この仕組みは、解体・再資源化・建設の各事業者の収益安定に寄与し、雇用や地域産業の活性化にもつながる好事例となります。
■ 景観・文化的価値の維持
瓦チップには、焼き物特有の赤みや土色があり、和風の景観や自然調和型デザインとの親和性が高いという特長もあります。古くから瓦文化が根づく地域では、単なる建材ではなく、「地域の記憶を引き継ぐ素材」としての意味も持ち、住民参加型のまちづくりにもつながります。
■ 導入しやすい規模とコストメリット
瓦チップの導入は、舗装材の一部や植栽周辺のマルチングなど、小規模な改修工事や景観整備事業から段階的に進めることが可能です。また、輸送距離や処理コストを抑えられる地域内調達が前提となるため、予算内での導入も現実的です。
■ 自治体が率先することで広がるモデルケース
すでに一部の自治体では、学校敷地の緑地整備や公園遊歩道、農業用水路の法面材などに瓦チップを採用しており、職員主導で地元業者との連携体制を整備しています。これらの事例は、国・県の補助制度や交付金の活用対象ともなりやすく、導入効果の「見える化」もしやすい特徴があります。
終わりに:自治体の一手が、地域の未来を変える
公共工事における資材選定は、単なる調達業務にとどまらず、「地域の未来をどう形づくるか」という視点が問われる時代になっています。自治体が率先して瓦チップのようなリサイクル資材を活用することは、環境政策の実行力を高め、地域経済を支え、さらには住民との信頼形成にもつながる“多面的な行政効果”をもたらします。
持続可能なまちづくりは、特別なことではなく、「今あるものを、次につなげる」ことから始まります。
瓦チップはその象徴――瓦の力で、まちの未来を築いていきましょう。