高山のコラム

コラム

瓦がまちを守る ― 自治体が率先する「瓦チップ」の新たな可能性

かつて日本の町並みを彩った屋根瓦。風雪に耐え、長い年月を地域の暮らしとともに歩んできたその瓦が、今、新たなかたちで“まちづくり”に貢献しています。その名も「瓦チップ」。これは、役目を終えた瓦を細かく砕き、再資源化したリサイクル素材です。

近年、瓦チップはその機能性・景観性・環境性の高さから、公共工事や都市景観整備において注目を集めています。透水性・保水性に優れ、ヒートアイランド対策や雨水浸透舗装としても効果を発揮。加えて、落ち着きのある色合いは、和の趣を活かした景観形成にもぴったりです。

このような特性をいち早く評価し、活用を始めているのが、地方自治体です。

たとえば、ある西日本の自治体では、解体現場から出る瓦を地元のリサイクル業者と連携してチップ化し、公園の歩道舗装、公共施設の植栽マルチング材、さらには学校の通学路整備など、幅広い用途で活用を進めています。「地元で出た資源を地元の工事に使う」――その姿勢が、地域内の資源循環を強く後押ししているのです。

また、瓦チップは天然素材由来のため、焼成時に有害物質を含まず、土壌や水質への影響も少ないとされており、環境にやさしい建材としても評価されています。こうした背景から、国のグリーンインフラ施策や脱炭素社会の実現にも合致する材料として、今後さらに注目が高まることが期待されています。

自治体が率先して瓦チップを公共工事に導入することは、単なるコストや環境対策にとどまらず、地域文化の継承や、地元産業の振興という意味でも大きな意義があります。伝統と現代技術の融合によって、廃材が“地域資源”に変わり、まちの未来を支えていく。これこそ、まさに「循環型社会のモデル」と言えるのではないでしょうか。

かつての屋根が、今は人々の足元を支える――。
瓦は姿を変えて、地域の未来を静かに、そして確かに支えているのです。