高山のコラム

コラム

日本家屋から学ぶ。

高性能建材の時代に、昔の日本家屋から学ぶべき “本当のリサイクル” のあり方

近年、建設業界では高性能で高耐久な建材が次々と登場し、住宅の品質・快適性は過去にないほど向上している。一方で、建材の複雑化と多素材化は、解体時の「リサイクルのしにくさ」という新たな課題も生み出している。

しかし、この問題のヒントは、実は 昔の日本家屋 にある。


1|現代の建材は“性能は高いが、リサイクルしにくい”

断熱性能・防火性能・施工性などは格段に向上した。
しかし、同時に複合素材化学製品が増え、以下の課題が生まれている。

■① 複合建材は分別が難しい

例:
・サイディング(表面コーティング+基材)
・複層ガラス
・合板、集成材
・繊維強化プラスチック(FRP)
・断熱材(硬質ウレタン、フェノールフォーム等)

→分別に手間がかかり、再利用しづらい。

■② 劣化しない素材ほど「土に還らない」

鉄・アルミ・プラ・ウレタンは耐久性はあるが、自然分解しない。
大量に発生するのに、再生率が低い廃棄物が増えている。

■③ 施工は早いが、解体工程は複雑化

・ボンド固定
・隠蔽配線/配管
・面材による全面接着

→取り外して再利用するより、壊した方が早い。
その結果、建材が“再利用される循環”が断たれてしまった。


2|昔の日本家屋は「解体しやすく、資源循環型」の代表だった

一方、戦前〜昭和前期の日本家屋には、今の時代が失った考え方がある。

■① ほぼ全部が“単一素材”でできていた

・木
・紙
・土壁
・わら
・瓦(陶器)

→素材そのものが自然素材で、分解する必要がない。

■② 金物が少なく、部材が「はめ込み式」

木組み(ほぞ、込み栓など)が中心で、
釘をほとんど使わないため、分解がしやすい。

→結果として
・梁は再利用
・柱は倉庫や小屋に再利用
・畳や建具も他の家へ移設可能
・瓦は葺き替えて再利用

昔は、解体後に**“ゴミがほぼ出ない”**家だったと言える。

■③ 土に還る建材が多い

・土壁 → 畑や土盛りへ
・藁 → 堆肥
・木 → 薪・建材
・紙 → 再利用・燃料

自然物で構成されているため、廃棄物という概念が薄かった。


3|なぜ昔は“建設業=資源循環業”だったのか?

理由は2つある。

■① 作るより直す方が安かった

大工が部材を見て、削って、組み直し、直して使う時代。
だから、建築=循環が前提だった。

■② 建材が貴重で、廃棄する文化がなかった

瓦も柱も梁も資材価値が高く、
「捨てる」というより「次に生かす」文化だった。

現代の“使い捨て建材”とは正反対だ。


4|現代の建材と“循環”を両立させるために

昔に戻ることはできないが、昔の知恵を活かすことはできる。

◎① 分別しやすい施工を意識する

・接着剤を使いすぎない
・部材を取り外せる工法
・断熱材と構造材を分けて施工する
→解体時のリサイクル率が大きく変わる。

◎② 単一素材の建材を選ぶ

例:
・木質断熱材
・土壁風の自然素材内装
・金属サイディング(リサイクル可)
→複合材より再利用がしやすい。

◎③ 解体を“分別解体”として計画する

・木
・金属
・コンクリート
・断熱材
・石膏ボード
これらを事前に分けておくことで処分費を大きく削減できる。

◎④ 地域で“建材の再利用ネットワーク”を作ること

・古材販売
・建具の再利用
・家具への転用
・DIY材料化

建設会社や解体業者が中心となり、
地域循環型の建材マーケットを作れる時代になってきている。


5|まとめ:昔の家にあって、今の家にないもの

現代の建材は間違いなく高性能で快適だが、
「寿命後の行き場」を考えて作られていないという弱点がある。

一方、昔の日本家屋は
・単素材で
・直せて
・分解できて
・また使える

という“本当の循環住宅”だった。

持続可能な建設を進めるには、
技術革新だけでなく、昔の知恵を現代の建材に生かす視点が必要になる。