📘 近年、品質や性能の高い建築資材が増えている一方で…
― 現場で増える“処理しづらい廃棄物”という新たな課題 ―
近年、建築・土木の現場では、高性能で耐久性の高い建材・部材が次々に登場しています。
断熱性能の向上、軽量化、省施工、耐震性、耐火性、メンテナンスフリーなど、
建物の品質向上に大きく貢献しています。
しかし、その裏側であまり語られないのが
「処理が難しい産業廃棄物が増えている」という現場の実態です。
建材が高機能化するにつれて、産廃処理業者の負担が増え、
結果として廃棄コストが上昇するケースも多くなっています。
🟦 ① 複合素材の増加で、従来の処理が通用しない
高性能建材の多くは、
・樹脂+金属
・樹脂+ガラス
・無機+有機材料
など、「複合材料」が増えています。
これは建築性能を上げる一方で、
破砕しても分離しにくく、資源として再利用できないという問題を生んでいます。
代表例
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高性能断熱材(発泡+特殊フィルム)
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複合樹脂サッシ
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不燃化加工された建材
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カーボン素材を含む部材
処理業者の選別ラインだけでは取り扱いが難しく、
埋立処分扱いになり単価が上がる原因に。
🟦 ② 耐久性向上=壊れにくい=処理しづらい
建材が「壊れにくい・腐りにくい」方向へ進化していることも、
本来メリットであるはずが、廃棄時にはデメリットとして現れます。
例
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高耐久フローリング(樹脂+無垢材+UV硬化塗装)
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高耐火性能ボード(硝子繊維入り)
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高強度コンクリート(破砕コスト増)
強度が高い=破砕が難しいため、
処理コストが従来品に比べ2〜5倍になるケースもあります。
🟦 ③ 省施工商品は「余材」が増えやすい
住宅メーカーや現場では施工効率向上のため、
「規格化された大型部材」「一体成型品」などが増えています。
しかしその結果、
端材・余材が大きくなりがちで、産廃量が増える傾向があります。
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一体型の屋根材・外壁材
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大型パネル
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モジュール化された建材
カット部分が増え、混合廃棄物の比率が高くなることも。
🟦 ④ 新素材は“リサイクルルートが確立していない”
新商品は次々登場しますが、
産廃処理の世界は急には対応できません。
新素材は
「安定した受入先がない」「処理方法が確立していない」
という課題を抱えることが多く、
結果的に
「処理業者が嫌がる ⇒ 単価が上がる」
という流れになっています。
🟦 ⑤ 高性能建材の普及が、産廃コストを押し上げる理由
これらの要因により、建設・土木現場では
“素材の進化”と“処理の困難化”がセットで進行しており、
産廃処理費の上昇に直結しています。
建設現場では今後、
・どの資材が処理しづらいのか
・どう使えば廃棄量が減らせるのか
・現場段階で分別して単価を下げられるのか
といった視点がより重要になっていきます。
