📘 昔の日本家屋は“ほぼ全部リサイクルできた”
― 現代の高性能建材との対比で見える、リサイクル問題の本質 ―
近年、建築資材は性能が大幅に向上し、
断熱・耐火・耐震・軽量化・省施工など、建物の質は飛躍的に高くなりました。
しかしその進化が、皮肉にも**「リサイクルを難しくしている」**という問題があります。
その理由を理解するには、
昔の日本家屋が“いかにリサイクルしやすかったか”
を対比させると非常に分かりやすくなります。
🟦 ① 昔の日本家屋は“単一素材”でできていた
→ 現代の建物は“複合素材”が増えすぎた
● 昔の家
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木
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土
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藁(わら)
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竹
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しっくい
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石
これらはほぼ 自然素材で単一構造 でした。
➡ 分別しなくても自然に還る
➡ 材料ごとに廃棄区分の判断も簡単
● 現代の家
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樹脂+金属の複合サッシ
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アルミ蒸着フィルム付き断熱材
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ガラス繊維入り不燃ボード
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各種接着剤、化学樹脂の多用
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プラスチック+木材の複合床材
➡ 破砕しても分離できない
➡ 複合のためリサイクル工程を組めない
➡ 結果的に 混合廃棄物扱いで単価が上昇
性能が上がった反面、
素材の複雑化が処理を極端に難しくしているのが現状です。
🟦 ② 昔の家は「分解前提」で作られていた
→ 現代は「固定・接着・一体化」が主流
昔の家は木材が主役で、
・釘をほとんど使わない
・ホゾ、仕口、継手で“分解できる構造”
・柱・梁を再利用する文化があった
まさに
分解→再使用が前提の設計
だったと言えます。
一方、現代は
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接着剤で一体化された床材
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ビス・釘・金物でがっちり固定
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外壁や屋根材の成型一体パネル化
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サッシ周りの気密テープ・ウレタン充填
など、
“壊したら素材が破壊される構造”
そのため、再利用はほぼ困難です。
➡ 昔:柱・梁・建具を再利用
➡ 今:破砕しないと分別すらできない
🟦 ③ 昔の家は「循環型の建材」
→ 現代の建材は「耐久性の裏で処理困難」
● 昔の建材
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木材:薪・炭・農具・家具へ
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土壁:また土に戻せる
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ワラ:畑の肥料・縄・畳の芯材
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竹:柵・道具・燃料
環境に負荷がほとんどなく、
循環可能な素材で構成されていました。
● 現代の建材
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高強度コンクリート
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ガラス繊維入りの防火ボード
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樹脂サッシ
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防蟻・防腐処理材
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難燃性プラスチック
これらは性能は高いものの、
再利用も分解も難しい非循環素材が中心。
特に
・断熱材
・複合フローリング
・複合屋根材
はリサイクルが非常に難しく、
結果として混合廃棄物の中でも処理単価の高い部類に入ります。
🟦 ④ 昔は“解体=材料の取り出し”
→ 今は“解体=廃棄物の処理”
昔の解体は「古材を救出し、次の家へ使う」ことが目的でした。
実際、古民家ではこんな再利用が当たり前でした。
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柱 → 新しい家の梁・柱へ
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建具 → 建具のまま別の家に移設
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畳 → 別の家へ再利用
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床材 →洗って再使用
今の家は建材が均質化され、
塊として再利用するのはほぼ不可能。
また、住宅の解体では
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防水シート
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気密テープ
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接着剤
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樹脂系建材
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断熱材
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石膏ボード
が混ざり、大量の混合廃棄物が発生します。
🟦 ⑤ では、リサイクルの観点でどちらが優れているのか?
結論は明確です。
🔵 昔の家屋
リサイクル率:極めて高い
構造:分解しやすい
素材:自然素材中心
廃棄:自然に還る/再利用できる
CO₂:極めて少ない
🔴 今の家屋
リサイクル率:低下傾向
構造:複合材+接着剤で分解困難
素材:人工素材・化学素材が多い
廃棄:リサイクル困難・混合物増加
CO₂:処理工程で排出量増
つまり
「高性能化」=「リサイクル性の低下」
という構造が生まれているのです。
🟩 まとめ:性能向上は必要。しかし、循環型の設計思想が求められる時代へ
今後、産廃の世界では
・分解しやすい建材
・単一素材で作れる高性能建材
・再利用しやすい部材
が求められる時代に入ります。
建築業界と産廃業界が共通して意識すべきことは、
「建てる段階で“壊す時”を設計に組み込む」
という、昔の日本家屋にもあった考え方です。
建築の進化と、環境対応の両立が必要な時代になっています。