「木」はどれだけ循環社会に貢献しているのか
──建設業が未来に残す“最も環境負荷の少ない建材”とは?**
近年、SDGsや脱炭素を背景に木材の価値が再評価されている。
だがその本質は「自然素材だから環境に良い」という単純な話ではない。
実は、木は “生まれてから廃棄されるまで、すべての段階で環境負荷が低く、循環に向いた素材” である。
ここでは、木材がどれほど循環社会に貢献しているかを、数字や事例を交えて深掘りする。
1|木材は「CO₂を固定したまま建物に残し続ける」唯一の建材
木材は、森林が成長する過程で光合成によってCO₂を吸収し、炭素として内部に固定する。
この炭素は、木が燃えるか腐るまでの間ずっと閉じ込められたままだ。
■ 木1m³(約0.5トン)が固定するCO₂
👉 約0.9トンのCO₂を吸収するとされている。
日本の平均的な木造住宅に使われる木材量(約30m³)で考えると、
📌 1棟で約27トンのCO₂を固定する計算になる。
これは、
・一般家庭の約2年分のCO₂排出量
・普通乗用車の約10年分の走行排出量
に相当する。
建てるだけでこれだけの炭素を固定する建材は、木以外に存在しない。
2|木は「製造エネルギーが圧倒的に少ない」
建材として比較すると、木材の製造にかかるエネルギーは驚くほど少ない。
🔹 製造過程で必要なエネルギー(比率)
| 材料 | 必要エネルギー(木材比) |
|---|---|
| 木材 | 1 |
| コンクリート | 約6倍 |
| 鉄鋼 | 約40倍 |
| アルミ | 約200倍 |
木材は、伐って、乾燥して、加工するだけ。
一方、鉄鋼やセメントは高温炉を使うため膨大なエネルギーを消費する。
📌 CO₂排出が少ない → 建てた時点で環境負荷が低い。
3|木は最後まで「資源」として使い続けられる
木材の強みは、廃棄時にも現れる。
🔹 木材のリサイクルルート
-
古材(梁・柱)として再利用
-
パレットや家具材に加工
-
チップ化 → ボード材(MDF など)に再生
-
バイオマス燃料として利用
-
土壌改良材(バーク堆肥・チップ)
木は、
💡 廃棄物 → 建材 → 燃料 → 土へ
という完全循環ができる稀有な建材だ。
日本の木くずの再資源化率
👉 約75〜85%
(廃木材の多くが燃料化・ボード材に再利用されている)
石膏ボードやプラスチックの混合廃棄物と比べても、圧倒的に高い。
4|解体した時に一番「資源として価値が残る」建材が木
解体現場では、木材は分別しやすく、再利用もしやすい。
🔹 解体時の木材の特徴
-
釘・金物を除けば 単一素材
-
チップ化が容易
-
焼却する場合もエネルギーとして利用できる
-
そもそも炭素を蓄えたまま燃やす(炭素中立)
金属やコンクリートと違い、化学処理や高度な分別が不要なため、解体コストも低い。
昔の日本家屋は「木組み」が多く、70〜80%の木材が建築資材として再利用されていた記録も残る。
現代で同じことをしようとすると、複合建材の増加が障害となる。
5|木造建築は地域経済にも直接的に貢献する
木材の価値は環境だけでは終わらない。
🔹 山側(森林)
・伐採 → 再造林により森林が若返る
・災害リスク低減(放置林より健全)
・林業雇用の維持
🔹 市街地の建設会社
・加工コストが低い
・軽くて施工が早い
・再利用しやすい
🔹 地域循環をつくる
木材は地域ごとに生産でき、輸送エネルギーが少なく、山から街へ「地産地消」が可能。
📌 コンクリート・鉄・化学建材にはない
**“地域で完結する資源循環”**を実現する。
6|木を使うことが「持続可能な建築」への最短ルート
まとめると、木が循環社会に貢献する理由は次の通り。
◎ 木は CO₂ を吸収して固定する(1棟で27tのCO₂)
◎ 製造エネルギーが金属の1/40、アルミの1/200
◎ 廃材になっても 75〜85%が再資源化
◎ 再利用・再加工の幅が圧倒的に広い
◎ 最終的に土へ戻る完全循環素材
◎ 地域経済も同時に循環させる
建材としてここまで環境負荷が低く、廃棄物になりにくく、再利用性が高い素材は木以外に存在しない。
これからの建設業・解体業・廃棄物処理業が目指すべき「循環型社会」の中で、木は間違いなく中心的な役割を果たしていくだろう。